5 裏の顔(3)

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「ええ。ルナリア様の具合も良くなりましたし、これで私たちは安心して辞めることができます」 「え? 辞めるって……?」  聞き間違いかと思ったけど、乳母たちの顔を見ると、そうではないとわかった。  乳母と侍女たちは、寂しげな表情を浮かべ、私に頭を下げた。 「ルナリア様のお世話を続けられず、申し訳ありません」 「ど、どうして!? みんな、どうして辞めちゃうの?」  ベッドから飛び出し、乳母にしがみついた。  みんな、困った顔をしている。  私に答えられないなにかがある。 「教えて! どうしてなのか、教えてよ!」 「ルナリア様……」  乳母に懇願する私を見て、フリアンが私をたしなめた。 「ルナリア。乳母たちが辞めさせられるのは当たり前だよ」 「あ、当たり前……?」 「王女が水路に落ちて死にかけたんだ。セレステ様も熱を出してしまわれたし、誰かが責任をとらなければいけないんだ」  ――水路に私を落としたのはセレステなのに!?  両親の愛情は諦めている。  でも、赤ちゃんの時から、私の面倒を見てくれている乳母と侍女たちが、全員いなくなるなんて考えられない。
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