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お母様の怒鳴り声が響き渡るはずだった。
それを阻止したのはレジェスで、寝間着姿の私を抱きあげた。
「ルナリア! 俺の見送りにきてくれたのか?」
レジェスの明るい声に、お母様は私を叱れず、慌てて黙った。
「あれから見舞いも断られて、ずっと会えないままだったから、どうしているのかと心配していた」
私の顔を見て太陽みたいに笑った。
お見舞いを断った覚えはなかったけど、高熱が続いていたから、乳母が断っていたのかもしれない。
ちゃんとお礼をいってなかったことを思いだした。
「レジェス様。助けてくれて、ありがとうございました」
「なんだ。他人行儀だな。もっとこう近しい態度で話したらどうだ?」
「う、うん……」
でも、ここにはお父様とお母様、セレステがいるから、おかしな振る舞いをするわけにはいかない。
レジェスのおかげで、今の私は守られている。
いなくなったら、こうして私をかばってくれる人は一人もいなくなるのだ。
――どうか神様。乳母たちだけでも私に残してください。
乳母と侍女のことを言うなら、今しかなかった。
「お父様、お母様。お願いがあります」
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