6 裏の顔(4)

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「お願いだと?」  お父様は見るからに嫌そうな顔をした。 「水に落ちたのは、ルナリアのせいなの! だから、乳母たちを辞めさせないでください」 「そうはいかん。お前の世話をするという役目を果たさなかった」 「ええ。セレステまでショックで熱を出して……」  「いい子にするからお願い!」  必死に頼み込んでいると、セレステが横から口を挟んだ。 「お父様。ルナリアが可哀想だわ。赦してあげて」  私が頼んだ時と違って、お父様の厳しい顔つきが優しいものに変わる。 「しかし……」  それでも渋るお父様を見て、私は泣きそうになった。  ――私が二番目だから、お願いを聞いてもらえないの? 「ルナリア、泣くな」 「れ、レジェス様?」  私の顔を覗き込み、レジェスは『平気だ』という代わりに微笑んでみせた。    「悪いのはルナリアではない。セレステは俺がいたから気を遣い、ルナリアを散歩に誘った。俺がいなかったら、なにも起こらなかったはずだ」  セレステは笑顔のままだったけれど、こわばった笑みを浮かべていて、さっきまでのセレステとは違う。
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