6 裏の顔(4)

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 ――お父様とお母様に、セレステは事実と違うことを吹き込んでいたんだわ。  私が勉強を怠けたくて散歩に出たとでも、言っていたのだろう。 「優しいセレステは、レジェス様に楽しんでもらおうとしたのでしょうね」  お母様はそれでもセレステを正当化する。 「あなた。今回はルナリアを赦してあげましょう。乳母と侍女を探して雇うのも大変ですわ」 「うむ……」  セレステが誘ったと知った途端、私を見る目が変わった。  私が言っても信じられないけど、レジェスは別らしい。  嘘がつけない性格だし、明るくて人を惹きつける。  それに、レジェスの言葉には力があった。 「わかった。しかし、今回だけだからな」 「ルナリア。これに懲りたら、いい子にするんですよ」  ――乳母と侍女たちが解雇されずにすんだ!  泣きたいくらい嬉しかった。  私が喜びのあまりなにも言えずにいると、レジェスが私を地面に下ろして頭をなでた。  まるで、『よくやった』というように。 「よかったな」  泣くのをこらえ、何度も首を縦に振った。 「ルナリア、俺に手紙を書け。悩みでもなんでもいいから相談しろ。いいな?」
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