7 知らない登場人物

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 少なくとも苦味や痺れ、異臭などを感じたものは、口にしないことに決めた。  セレステはまだ子供だから、そこまでできるとは思わないけれど、警戒しておくに越したことはない。  ――水路に落とされてよかったかも。あのままセレステが善人だと思っていたら、ここまで必死にならなかったわ。  本を閉じ、乳母の名を呼ぶ。 「ティア。質問していい? ルナリア、お勉強の成果を披露したいな~!」 「えっ、ええ……。そうですわね……」  笑顔の私に対して、向こうは目に見えてうろたえていた。  私の乳母の名前はティアと言う。  髪は茶色で瞳は青。  年齢は教えてくれないけど、外見は二十歳くらいに見える。  彼女は男爵家のご令嬢で、家計を支えるため、乳母の募集を見てやってきた。  セレステの乳母になりたい人は多かったけど、ルナリアはそうではなかった。  ――これが一番目と二番目の差。セレステは存在するだけで人から愛されるんだから、不平等すぎるわ。  世界は不平等だと決まってるけど、こんなのあんまりだ。  でも、ティアが立候補してくれて本当にによかったと思う。
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