1 『二番目の姫』

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「驚かせちゃって、ごめんなさい」  だらしない顔を引き締め、キラキラオーラを放ち、みんなに謝った。 「あ、あら? いいのですよ」 「珍しいわねぇ。いつものルナリア様なら、大暴れして床に転がってるのに」 「そうそう。手足をバタバタさせて怒るわよね」  それは、両親がセレステばかりにかまうから、こっちを見てほしかった私(五歳)は寂しくて癇癪(かんしゃく)を起こしていただけなのだ。  でも、死につながるとわかったら、これからは、ワガママは控えて乳母と侍女のご機嫌を取り、うまく味方につけなければならない。  両親から放置されていたことも周りが冷たかったのも、『二番目の姫』の話を思い出し、ようやく合点(がてん)がいった。  読もうと思っていた童話の本を閉じた。  ――王子と王女のハッピーエンドは私にはこない。  婚約者から婚約破棄され、セレステに悪者としてトドメを刺される運命にあるのに、こんな夢を見てもしかたない。
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