1 『二番目の姫』

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 両親と婚約者捨てられたルナリアが一人で生きていけるように、私がこれから読むのは別の本だ。 「ルナリア様。それは経済の本ですよ? 難しくありませんか?」 「そっちは農業分野です。まだ早いのでは?」  乳母と侍女が止めるけど、私は時間が惜しかった。  生き延びるための知識と力を手に入れなければならないのだから真剣だ。 「ううん。ルナリア、こういう本、好き。みんなはお休みしてて? お仕事、おつかれさま」 「ルナリア様!?」 「私たちをねぎらった?」 「お熱があるのではありませんか?」  もう私は五歳のルナリアではない。  二十六歳ゲーマー、会社員の記憶を持つ転生者である。   「乳母。あのね、ルナリアに家庭教師をつけてほしいの」 「家庭教師!? まだルナリア様には早いと思いますが……」 「まずは、セレステ様の家庭教師を雇ってからでないと、ルナリア様の家庭教師を雇えません」    ――やっぱり二番。小説『二番目の姫』の力が、私を二番目にしようと邪魔をする。  両親に交渉を考えたけれど、両親の口癖は『セレステから』『姉のセレステがまだだから』――こうだろう。
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