10 いつまで二番目?

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「シモン先生、申し訳ありません。授業の途中ですが、これで失礼します」 「かまいませんよ。王女としての務めが優先です」  家族とのお茶の時間は『王女としての務め』だと、シモン先生はわかっている。  私にとって、家族とのお茶の時間は楽しいものではなく、仕事と同じなのだと。  この七年間、シモン先生は私にありとあらゆる知識を与えてくれた。  家族との時間より、シモン先生との時間が長いくらいだ。  シモン先生は私の立場を理解して、嫌な顔ひとつせずに送り出す。    ――シモン先生は小説『二番目の姫』に登場しなかったキャラクターなのよね。  女性と間違えそうなくらい美人で、モテモテなシモン先生だけど、派手な生活を送っておらず、女性との噂もない。  しかも、喪に服したような黒や暗い色の服しか着ておらず、とても簡素な服装で毎日過ごしている。  みずから目立とうとしたり、なにかを主張したりすることはなく、静かに過ごす方という印象だった。  教師としては、図書館の館長に選ばれるだけあって、豊富な知識を持ち、私の質問にはなんだって答えてくれる。  おかげで七年間、充実した毎日を送れた。 「ありがとうございます。いってまいります」 「……あなたが時々、十二歳ということを忘れてしまいそうになります。今もとても大人びている」 「えっ、そ、そ、そうでしょうか~」  残念ながら、私の演技力だけは成長してないようだ。
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