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「あら。ルナリア様は十二歳ですよ。この間もケーキを食べすぎて、苦い薬を飲む羽目になったんですから」
「ティア! 勉強すると甘い物が欲しくなるから、仕方ないのよ!」
抗議する私に『仕方がない子ですね』という顔で、ティアは笑っている。
乳母のティアは、私がいくつになっても母親代わりで、安心できる存在。
彼女は今も独身で、私に尽くしてくれている。
「青い瞳と白い肌。ルナリア様の銀髪が長くなったせいか、シモン様とルナリア様はまるで兄妹のように見えますわね」
「ははは。親子と言われなくてよかったですよ」
ティアの言葉にシモン先生が笑う。
――本当。シモン先生が兄ならどんなによかったか。
ここは、私が私でいられるなごやかな場所。
いつも二番目にされて、私といても損しかないのに、私から離れずにいてくれる大切な人たち。
優しいみんなを見ていると、自然に笑みがこぼれた。
「ルナリア様。陛下がお待ちです。早く参りましょう」
「ええ。わかったわ」
国王陛下付きの侍女が、私の手を引いて急がせる。
遅いと叱られるのは、私だけじゃなく侍女も同じ。
早足で部屋から出て扉を閉めた。
お父様が待つ謁見の間へ向かう。
自分の身長より何倍もある扉の前で足を止め、扉を叩く。
「お父様。ルナリアです」
「入れ」
「失礼します」
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