第九話 過去には戻りたくない

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「顔色悪いけど大丈夫ですか」  大城さんが心配してくれた。こう一緒に働く人から心配されることってないのよね。気が利くなぁ。  この会社に来てからすぐ今のように働けるようになったのも時間がかかったよね。  転職、中途採用の私。しかも新卒一年で病んで退職だなんて心象悪いし。同い年の新卒社員はもうコミュニティも出来上がっていたし上司も最悪、大魔神の山田課長になってからましになったかな。そこで謙太の会社と交流があって  謙太とかかわるようになってからかな。彼と出会ってから過去に戻ってやり直したいだなんてなくなった。反対に過去に戻りたくない。謙太と出会ってから私の人生は変わったんだ。 「ありがとう」 「これからは私達も白沢さんをサポートします」 「ありがとう、とても頼りになる」  そういうと大城さんはイヤぁ、それほどでもーと照れた。こんな彼女の一面初めて見た。他のメンバーとも目が合った。私はもっと周りに頼ればいいんだ。今まではがむしゃらだった。  メールの着信。画面に表示された名前を見てぎょっとした。  謙太のお姉さんの美濃里さんだったのだ。謙太があまり姉からのメールを返さないらしくって。なんで私に来るんだろうとか思いつつも。 「今日家に行っていい?」  今日の今日? 悪い人じゃないんだけどさ……ちょっと押しが強くって。私は苦手。話始めると彼女の妊活ストーリー聞かされるし、同じ話はしてこないけど最近はママ友の愚痴が多い。  そして何かと早いうちに病院で診てもらって早いうちに妊娠できるようにしなさいって。  だからこういうお誘いも少し間を置いてから色々理由付けて断っていたんだよね。  でも今夜って……謙太家にいないんだよなぁ。接待。  そうだ。美濃里さん、誘ってみるっていうのもいいのか? もっと妊活の話するべきなのか。ヒントが見つかるかも。大城さんをこうして仲間に入った時の事のように何かあるかもしれない。 「白沢さん、ちょっとすいません。これ脱字が」  大城さんが渡してきた資料を確認すると確かに! 明日の講習会で使うやつなのに! てかこれ担当したのは。 「すまん。俺がやっちまった」  山田課長! しかも配布分全部。  やっぱ今日は無理。美濃里さんには仕事が遅くなります! とメールを送って私は訂正作業に取り掛かった。
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