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第十話 コーヒーの香り
そんなこんなで。
仕事量は緩和されたしタイミング法アプリで私の心身もバランスよくなっているのに妊娠しない。やっぱり病院に行くべきよね、とポロっと謙太に言ったら大丈夫だよ、今は焦っちゃダメだってことだよだなんてまたのんきに言って。
美濃里さんに喝入れてもらいたいけど……なかなかこっちの方もタイミング合わず謙太の実家に行った時にちょろっとあって姪っ子ちゃんたちあやしていたらそつない会話しかできなかった。
あの時ご飯を断ってしまったけど断らなかったらとか思ったりもしているけど。私が仕事忙しいんだなぁって前もそうだ、そう思われて誘われなくなったんだ。
まぁそれはいい。
と、今日は日課になってた二人で朝活のトレーニングを終えてコーヒーを飲んでまったりする時間。前よりも余裕が出来てほぼ毎日コーヒータイムで来ているのって幸せである。
最初のころは謙太はすっごく眠そうだったけど週間になったらはきはきとするようになって互いに体のラインが整ったと思う。
「なんか梨花ちゃん体すっきりした感じだね」
「そう?」
……ん、なんかこの感じ。懐かしい。
「あ、なんか豆が違う」
……。
そうだ、ふとたまには高級なコーヒー豆でもいいかなと思って手に取ったもので作ったコーヒー。
……なんで手に取ったんだろう。この匂いが記憶になぜか残っていた。その記憶……記憶……。
「さすがだね、謙太」
私は体が震えた。
「へへへっ」
その笑顔……いつもの笑顔だけど……この展開……。
「どした?」
「……う、ううん。豆の違いがわかるんだもの。すごい」
……うそよ……そしたらこの後……。
「今度さ、温泉旅行行こうよ」
やっぱり!!!
「……梨花ちゃん?」
……返事ができない。謙太は私の顔を覗き込む。
「僕そろそろ有休とらないと人事部からちくちく言われる……もう言われてるんだけど」
「……謙太に合わせるわ」
前よりも人員が増えて休みも取りやすくなってるから謙太に合わせられる。
「ありがとう。いつにしよう」
コーヒー、緩くなってる。そして、この後は確か……。
メールの着信……。
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