第十三話 サレ妻

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第十三話 サレ妻

 目を開くと息がすごく上がっているのに気づいた。  リアルすぎた。今のはリアルすぎる。    頭を打ちつけても尚、痛みがひどくジンジンして。  が……今いる場所は部屋、いつもの部屋。痛みが一気にひいた。 「梨花ちゃん?」  そして微笑む謙太。  この場面、見たことある。謙太が死んだという夢を見た後、起きた時に……。  どういうこと? あれは夢を見て目を覚まして……今回も夢だった、てこと?  夢の夢? 「梨花ちゃん、おはよう」  そうだ、このセリフも謙太の微笑みも同じだ。  私は確か……1回目の夢の時に謙太が死んだのを信じれなくて泣いて抱きしめたはず。 「うん、おはよう」  本当はこの言葉も言いたくないほどだ。だってこの時にはもう鷲見とは男女の仲になっているのだ。彼女の証言だと。 「元気ないね。それにうなされてた」 「あ、うん。悪い夢見たから」  なんか軽蔑してしまう。  他の女を抱いてたんでしょ。てか気持ち悪い。  私はふとテレビを見た。 「あなたはやり直したい過去はありますか?」  私はスマホの画面を見るとやはりあの日付に戻っていることを確認する。  「流行ってるらしいね」  ああ、この会話もなんか覚えている。  はあ、頭が痛い。何からどこまでが夢なの? 私、過去をやり直しているの? なんで?  やり直すなんてもっともっと前からやり直して欲しいくらいなのに。なぜこのタイミングで戻るの?  「作り置きしてから寝ちゃったもんね。おなかすいた?」  お腹はすごく空いている。  やっぱり無理。他の女を抱いた男だなんて。 「顔色悪いよ。どうしたの……」  彼の手が私の頭に……私は思わず振り払ってしまった。二人の間に沈黙が流れる。 「ごめん」 「どうしたんだよ、体の調子が良くないみたいだね。まだ休んでて」  謙太はダイニングに行ってしまった。  
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