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もう何も聞きたくない。
全てが言い訳になる、そうでしょ?
私は机を叩く。
「……もう何も信じない。隠し事してたこと自体最低、他に女作って子どもまで作って……最低、最低過ぎる!」
「え、ちょっとまず落ち着いて。それに子供って???」
しまった、また先のことなのについ口が……。でもそうなんでしょう、不倫してそれを隠して……!
「もうお願い、私の前から消えて!」
「梨花ちゃん! 落ち着いて。まず話を聞いて欲しい。鷲見さんは、鷲見さんは……」
「不倫相手でしょ!」
「ちがう!」
「言い訳しないでちょうだい!!!!」
だめだ、もう止まらない。言い訳しても無駄よ……。
「梨花ちゃん!」
謙太にガシッと肩を掴まれた。
私はハッと意識を取り戻した。
「……深呼吸するんだ、梨花ちゃん。君のいけないくせが出てしまっている。前もそうだったろ」
「……謙太さん……」
謙太に肩をガッと掴まれたのは初めてではない。
私はボロボロ涙が流れた。声からうあああっと声が出て泣き崩れ力が抜けていく。
そして謙太は私を抱きしめてくれた。
頭も撫でてくれた。……息が上がる。心拍数もすごい。
「呼吸整えて、落ち着いて……少し落ち着いてから話を話そう。僕はもう嘘は言わない。黙ってた僕がいけないんだ。落ち着くまで……僕の腕の中でいいのなら泣いてくれ」
優しい声、優しい抱擁、それが私を救ってくれたんだ……あの時も。
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