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私はため息をついた。
「お金出すから普通のクリニックに一緒に行きましょう。私自身の身体の事もあるかもしれないし」
「でも、最初の病院だとあまり」
「あまりってなによ。そんなに? 自分騙されていることに気づかないの……」
すると謙太は頭をまた床に擦り付けた。
「今度そのお金を払わなきゃいけないんだぁああああああ」
って、もう手を出してたんかい!! なんで私は見抜けなかったのよ……。まぁそれは納得できる、私は周りを見ない人間だし……謙太のサインに気付けないったから。
んー、あの目を覚ます場面ではもう騙されていたのかしら。
「……治療が進まないしどうしようと思ってた矢先に知り合いから声かけられて……」
って、私のせいじゃん?! 私がお金を共同募金から抜いたから。
それがあったら変な詐欺にかもられなかったのかしら。
ああ。
「その怪しいところ、なんとかクーリングオフとかできないの?! 消費者センターに電話!!」
「もう無理だよ」
「ねぇ、それいくらなの?」
謙太はかなり動揺している。今までにないくらい。こんな彼を見たことがない。
鷲見さんとの件よりも動揺しているし、そんなに不妊のことを隠し通していたことがいけなかったの?
ん? そいや……鷲見さん。お腹の中に謙太との子供がいるとか言ってたけど?
関係もない、謙太にはこの種がない。でもこれは彼の口からの情報だけだから信ぴょう性ない。
でも鷲見さんのお腹の中の子供は誰との子供なの?
なんで彼女は謙太との子供だって言ったの?
お金?
私まで混乱してきた。
「落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ……ね、謙太……」
と声をかけると謙太はフラフラしながらベランダの方に行く。
「ちょっと……謙太? 謙太?!」
彼がベランダをあっという間によじ登ってしまった。私は彼の体を掴むが手を振り解く。
「……謙太?!」
そしてあっけなく落ちた。
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