第二十七話 面前モラハラ

1/2
前へ
/78ページ
次へ

第二十七話 面前モラハラ

「謙太はいつも笑ってた、だから清乃も少しは元気になったし私も謙太といる時は心が休まったわ」  彼女強気な性格はどこからきたものだろうか。母親からの嫌な過去があってこんな性格って……。 「私も不妊治療の末母親になって感情がめちゃくちゃになる……それは身をもってわかったけど……でもあそこまでなるなんておかしい」 「お母さんは……今……」  結婚してから謙太は義母さんのところに行くことはなかった。  仕事が理由で謙太は行けないと言ってたけど……もしかしてそういう理由だったのだろうか。 「お母さんは今、施設にいるわ……たまに私が様子見に行くけど。こないださらに病気が悪くなって閉鎖病棟に……」  これまた知らなかった事実。でも葬式の時にはきていたような。見た感じあった時も普通にしていたような。 「お母さんのことは……黙っておこうって。おじさん……お父さんのお兄さんがね。本当ごめんなさい」 「……いえ……実は」  私自身も毒親であるうちの両親のことは謙太から白沢家には詳細は言わないようにしようと2人で決めていた。  これはお互い様なのだろう。  私の言葉を覆い被せるように美濃里さんは話を続けた。 「お母さんは謙太を溺愛していたようでそうでもなかった。支配しているだけ、自分の思い通りにしたかっただけ。従順な子だったから都合の良いようにしたかっただけ。あの熱だってお母さんが謙太を放置したから酷くなった。流石にこれはお父さんもお母さんに怒ったけどますますひどくなってきた……謙太への干渉……」  そんなこと……全く知らなかった。本当にこれは真実なの? 「叔父さんが謙太が大学入学と同時に上京一人暮らしでおじさんのマンションに入れてくれてお母さんから守ってくれて……私たちも逃げるように結婚して……お父さんも離れて……お母さん1人で過ごすようになった。そしたらなんかつきものが取れたかのようにお母さんはおとなしくなったの。どうやら……彼女は無意識のうちに誰かと一緒にいることでストレスが溜まっていた……原因は不明だけどね……」  白沢家はみんな黙ってたのね……いや、私が知ろうとしなかっただけ。美濃里さんと距離を置き話すこともなかった。  美濃里さんや清乃さん……お姉さんたちのことも叔父さんのことも、両親のことも謙太が話さないから……あえて聞こうとしなかった。  私が聞かなかったからみんな言わなかっただけ。  ……私が聞き出していたら、知ろうとしていたら……わかっていた事実なのよね? でもここまで語るのには彼女たち、謙太たちはずっと抱え込んでいた。どこかに話したかったに違いない。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

286人が本棚に入れています
本棚に追加