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「美濃里さん、そんなに謝らないで……」
「だって、だって……謙太には幸せになって欲しかったの。私と清乃は逃げるように結婚して……逃げることしか頭になくてろくでなしな男と結婚して……私は不妊治療もして出産して離婚したけど清乃は離婚できず夫の言いなりで苦しんでいる。だからこそ……謙太が素敵な人、と言って紹介してくれたあなた、梨花さんと幸せになって欲しい……だから私たち家族の秘密は……お母さんのことは黙っておこうって」
美濃里さんは泣き崩れた。
私は抱きしめた。彼女を。
毒親のことや過去の恋愛のこと、謙太さんはたくさん聞いてくれた。そして頑張ったね、辛かったね。ぼくが守ってあげるね、って抱きしめてくれたっけ。
……謙太も、美濃里さんたちも辛かったのね。ああ、謙太にも話を聞いてこうやって抱きしめてあげたい。
もっと早く……もっと早く聞いてあげれば……そうすれば謙太は死ななかったのだろう。
私は謙太の死なないルートを見つけた気もした。
「あとね、ごめん。私たち……謙太からあなたのこと全部聞いてる」
「え」
私は少し離れると美濃里さんは伏せ目になっていた。
「謙太は自分たちと同じ子がいた。彼女ならわかってもらえる……って」
「……」
私はもう一度美濃里さんを抱きしめた。
そして後日、私は美濃里さんに頼み謙太の叔父さんの家へ謙太と共に行った。美濃里さんも同伴して。
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