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「謙太は……子供何人欲しい?」
聞いてみると彼は微笑んで
「うーん、欲は言わないよ。でも一人、必ず一人は欲しいよね」
と言った。彼は私よりも二歳上の31歳。子供が成人になってもまだ現役だがもし二人目、私が35歳で出産したら二人目の子が成人になるともしかしたら謙太は早期退職しているのかもしれない。
子供はやはり大学に通わせたい、二人で以前そう語ってはいた。私達も大卒だから。あぁ、お金……働かないと。子供の学費、その為にも働かないと。
「悠長なこと言わずにすぐ子供作ればよかった」
ついそう口から出してしまった。私はネガティブだから……つい。
「……梨花ちゃん、まずは落ち着こう」
そんなネガティブな私を救ってくれるのがポジティブな謙太なのだ。だがこればかりはもうだめだ。涙がボロボロ出てくる。落ち着いている場合ではない。
謙太はいい、自分は気持ちよくなって出すだけだから。私は入れられるその感覚が嫌だ。
ってそんなこと言えば楽になるのかな。そんなこと言っても謙太はいつものように微笑んでくれるのだろうか。ふと彼の顔を見た。少し悲しげな顔をしている。
こんな顔を見るのは初めて。私はその顔を見てさらに涙が止まらなくなった。
「梨花ちゃん」
と謙太が思いっきり抱きしめてくれた。その夜もその流れで抱かれた。
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