286人が本棚に入れています
本棚に追加
第二十八話 虚無
謙太は何も知らせず来たけど、叔父さんと美濃里さんがいた時点で分かったみたい。
そして覚悟して告白してくれた。
自分は子供ができない体質であることと、その受診と治療のために夫婦の共同貯金からお金を出してこっそり病院に通っていたこと。
あ、今回は色々バタバタしててお金を抜き出すことはしてなかったけど変な薬を渡すような知り合いには頼まずちゃんとした不妊治療クリニックに通っていたらしい。
わずかな望みだけど可能性はあると言われ、これからの治療をどうするか悩んでいたらしい。
私は謙太の手を握って
「私も病院に行く」
と言うと梨花ちゃんには心配と心労をかけたくなかった、と泣き出した。
私は首を横に振った。
すると叔父さんが
「今は子供よりも……2人には適切な治療が他にもあるはずだ」
と告げる。それは美濃里さんにも、と。
「精神科の方にカウンセリングを受けたほうがいい。子供はできても……美濃里ちゃんはもういるけど……君たちは親になるんだ。親が不安定なままで、過去を癒されていない状態で子育てはできるのだろうか。心理カウンセラーを探そう」
……確かに。
私はあの親しか知らない。子供が産まれても私がされたような方法でしか子育てができないかもしれない。
謙太さんも? 美濃里さんは泣きながら頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!