はじめに

1/1
前へ
/14ページ
次へ

はじめに

何もかもうまくいかない。 積み重ねては端から崩れ、また積んでは大きく崩れ。 何かをすれば裏目、何もしなけりゃ悪化は進む。 事業の失敗である。 暑い夏。三連休中日、高原に位置するこの場所にはひっきりなしに車が往来している。 しかし、僕の店には誰も来ない。 昨今の流行りで、車中泊がたくさんいる。 すぐ近くに泊まっている。 それを当て込んで、6時から朝食を準備している。 誰も来ない。 予約や問い合わせの電話も鳴らない。 頑張れば頑張る程、損害が増える。 それでも絞りに絞って2万円で仕入れた食材、オオズワイガニ、コシナガマグロ、プレノワール。 昨日の売り上げは、たったの1000円。 悪循環の、真っ只中。 だから、眠れない。 眠らなきゃ、と、寝酒を飲む。 そのほとんどが、車や店のキッチンで。 粗悪な睡眠。 だから、悪夢ばかり見る。 本稿は、忘れる前に書き記す悪夢と、その分析である。 夢の中でまんまと死ねたなら。 しかし、まだ目は醒めるだろう。 現実の、そのど真ん中に。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加