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ほとばしる歓喜。華の金曜日という現在地がもたらす生へのブースト。労働の鎖から脱することは、重力から解放されたに等しい。煩雑とした地面から、心が躍り出すままに天へと力強く舞い上がる。 燦然と輝く希望へと飛び立つ彼らを誰も止められない。常識や理性と呼ばれる重たい扉を開け放ち、大声でにゃん玉と叫んだっていい。にゃん玉かわいいよね睾丸なのに。あれ? さすがに叫ぶのはよくはないか? 「ナイスにゃん玉!」 にゃん玉きらニキはこちらに向かって、親指と人差し指でハートを作ってウィンクをした。 きらきらとした光エフェクトがニキの笑顔にかかって見えた。至近距離、真正面からファンサをくらってしまった。あやうく黄色い悲鳴をあげそうになる。 颯爽と去っていく背中を見送る。ビブラートを利かせた鼻歌が遠くに行ってしまう。 良く晴れた夏の日に吹き抜けていく風のようだった。 うちの猫は女の子だし、今日は火曜日だ。 ブロック塀を曲がったところで、女の人が道路に座り込んでいた。パンツスーツを着たその女性は、ビジネスバックを放り出し、猫の身体に顔を近づけていく。 鼻先が毛に触れそうなところでハッと我に返ったように身を引いた。髪を振り乱して首を横に振っている。 「だめ。猫吸いしたいけど、猫吸いしたいけども! 出会いがしらにいきなりするのはさすがに失礼! 信頼関係が! 築けていないので! 我慢なさい、わたし!」 野生の猫吸人(ねこすいんちゅ)だった。
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