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ちょっとお高い食事をぺろりと平らげた猫は、居間に移動して窓辺にどーんっと転がった。寝そべったまま前足を舐めて顔を洗っている。少ししてから見ると、長々と横たわって寝ていた。 トイレに行くために通りかかってもまるで気にしない。 我が城とばかりに無警戒で転がっている。これほど嬉しいことはない。猫に幸あれ。 いや、飼い主たちがありったけの幸を送るから、いっぱい食べていっぱい寝て健やかに生きてくれ。 トイレの窓から差し込む陽射しが夕方へと向かっている。 下校途中だった小学生の女の子たちや男子高校生たちは、なにごともなく家にたどり着いただろうか。にゃん玉ニキや猫吸人(ねこすいんちゅ)の女の人は、なにをしているだろう。お巡りさんのお世話になっていませんように。 洗面所で手を洗う。 玄関の引き戸が開く音が響き渡る。ビニール袋のがさがさという音とともに、「ただいまー」という母の声と廊下を歩く足音が重なって聞こえてくる。家の中が一気に賑やかになる。 そこに猫の鳴き声がまじる。 「ちょっと待ってね。いま用意するからね~」 いろんな物音がして、戸棚を開閉する音がしてきたので、あわてて洗面所から大声を出した。 「母さん! ごはんあげてるよ! もう食べてるから!」 タオル掛けからタオルを引っ掴んで、台所に走り込む。 すでに餌皿にはいつものフードが用意されていた。猫は当たり前のように食べはじめる。食事を見守っていた母が驚いた顔をして振り返った。 「えぇ!?」 カリリッとドライフードを齧る音。きれいに皿を空けた猫は、満足そうに口の周りを舐めた。 食卓の椅子に座っていた母は呆れたように笑った。
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