捕らわれの女

21/81
前へ
/273ページ
次へ
「しばらくはそばにいて、自立なんて自信が無いし、 それに私、働いたことが無いのよ」 僕は数週間、映子のそばにいた。 住まいは小さな一軒家だった。 火加減で料理して風呂を沸かすので、コツが必要だったけど、映子は 慣れていった。 美容院で髪を整えることもできた。 働くのは市場での果実売りで、レジをやるわけではなく、紙に包んで 渡す役目だった。 それも順調にいった。 そして住まいの近所の人たちや店の従業員とも仲良くなれた。 「ありがとう、日並くん、私、人生をやり直してみる」 「それができると信じたい」 事が上手くいきすぎて心配なくらいだった。 僕は安心して、自身の部屋へと戻った。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加