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偽造した保険証で映子には病院で定期健診を受けさせた。
テウスは、とある企業に勤めていることになっているが、仕事をせずに
映子のそばにいた。
栄養バランスを考えた食事を作り、映子にも料理や家事をさせて
勉強もおしえている。
もちろん好きな絵本もDVDもゲームもある。
気に入った洋服も髪飾りも買ってもらっている。
映子は部屋で過ごすほうが好きになっていた。
外に行くと殺したくなるほどの人間がいるからだ。
それがとても不快だった。
テウスと電車に乗ったときのことだ。
ペットボトルの水を飲み干した女性が、空いた容器を座席に置きっぱなしに
した。
それをみて映子は女性に向かっていって、人差し指を突き差した。
「なんで殺した?」
テウスは聞いてみた。
「ペットボトルを座席に置き捨てるなんて、しちゃいけない、みっともない」
「だから殺した?」
「うん、人間として、ダメだから」
映子は生真面目に育ってしまったことを、テウスは実感していた。
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