人を殺せる女

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「それでね、二十歳になったら自由になれたのよ。 自分の理想の女性にと成長したって。認めてもらえたの。 28歳になって、永遠の美を与えるまでは、好きに生きていいって。 ただ、美を保つ為の努力を強いられてるけどね。ジム通いとか、 糖分を控えるとか」 不思議で不気味な話しを、僕はラブホテルで聞かされた。 魔物に気に入られた、躊躇なく母親を殺した、軟禁されたままで 小・中・高校に行っていない。 明確な常識を教え込まれたせいで、些細なマナー違反でも許せなくて 殺してしまう。 そして今夜は些細ではないチカン行為の男を殺した。 「そうして街を歩き回って殺し続けているの?」 「気が向いたときにね」 気が向いたときに殺人。 「水筒の男の子は自分で車道に飛び出した。そうさせたの?」 「そうよ。他にも数日後に癌が発見されるとか、とにかく死ぬの」 「それって、楽しい?」 「別に。言ったでしょ、気が向いたらって」 映子が服のままでベッドに寝転がった。 スカートから均整の取れた細い足が伸びている。 「魔物に出会ったせいで気の毒な人生だね」 「あら、日並くんは魔物を知ってるの?」 「知ってるから話しについてこれるんだよ」 「それはそうね。何者なの?」 「人間じゃない」 「魔物?」 「どちらでもない」 「第三者あらわる、か......面白くなってきたわね」 映子が身体をベッドの上で反転させて仰向けになった。
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