捕らわれの女

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僕は自身の部屋でパソコンを操作する。 映子の前世の経歴を調べてみたら、三回だった。 人間、人間、猫......。 パソコンには人生が記録されている。 人間。 江戸時代、町娘、酒場で働く、縁談が破談になる。独り身で死ぬ。 人間。 大正時代、一般的家庭、若くして震災で死ぬ。 猫。 昭和時代、戦後、黒猫、野良猫、拾われて飼われる。 猫のとき、もらわれた家で斬殺事件が起こる、そのときに死ぬ。 僕は考えた。 映子の生涯はどれも『達成』されていない。 独り身、震災、そして斬殺事件......。 映子の『自分の気が済むまで事が運ばないと気に食わない』という性質は 過去からきていたのだ。 だからなんでも欲しがった。 嫌なものは嫌だと引かなかった。 いまも『28歳でテウスの嫁になって不老不死になる』という願いを 達成したくてしょうがないのだ。
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