捕らわれの女

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「映子は過去にとらわれている......」 それだけは、わかる気がした。 そうして僕はパソコンを設定して過去へ空間をつないだ。 ふすまを開けて昭和へと行った。 映子が黒猫だったとき、その斬殺事件が気になったからだ。 外へと出てふすまを閉じる。 戦後の緑に囲まれた風景が、そこにあった。 「クロ、クロ、おいで」 白いワンピースの女性がしゃがんでいる。 そこへ小さな黒猫が歩いてきた。 まだ生まれたてらしい。 女性が黒猫を腕に抱く。 「暑いわね、水を飲ませてあげるわね。あたしもかき氷を食べたい」 「あ、あの」 声をかけつつ、どうしたらいいのかわからない。
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