4人が本棚に入れています
本棚に追加
「どちらさま?」
長い黒髪を風になびかせて、大きな目でみつめてきた。
「道に迷ってしまって。バス停はありませんか?」
「バス停は遠いですよ。そうだ、うちで休んでいってください。
かき氷なら差し上げますよ。こんな真昼に動き回ったら、
暑くて大変です。時間があるなら、夕方から案内します」
昭和って、こんなに無防備に人を誘う時代だっけ?
多少の強引さに戸惑ったけれど、都合は良かった。
「あ、はい、できれば、お邪魔させてください」
「どうぞどうぞ、縁側でよろしければ」
場所としては村らしい。
二階建てくらいしか建物がない通りを歩き、一軒家に着いた。
そして庭の縁側へ通された。
縁側に座ると、女性がかき氷機とシロップを持ってきた。
かき氷ができる様子を見るのは少しワクワクした。
黒猫は小皿に置かれた氷をなめている。
最初のコメントを投稿しよう!