捕らわれの女

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「どちらさま?」 長い黒髪を風になびかせて、大きな目でみつめてきた。 「道に迷ってしまって。バス停はありませんか?」 「バス停は遠いですよ。そうだ、うちで休んでいってください。 かき氷なら差し上げますよ。こんな真昼に動き回ったら、 暑くて大変です。時間があるなら、夕方から案内します」 昭和って、こんなに無防備に人を誘う時代だっけ? 多少の強引さに戸惑ったけれど、都合は良かった。 「あ、はい、できれば、お邪魔させてください」 「どうぞどうぞ、縁側でよろしければ」 場所としては村らしい。 二階建てくらいしか建物がない通りを歩き、一軒家に着いた。 そして庭の縁側へ通された。 縁側に座ると、女性がかき氷機とシロップを持ってきた。 かき氷ができる様子を見るのは少しワクワクした。 黒猫は小皿に置かれた氷をなめている。
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