捕らわれの女

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「久しぶりにガッツリ飲みたい気分だ。妻に遅くなるって連絡します」 彗星がビールをジョッキで注文してから、スマホを開けた。 「家庭は順調そうだね、仕事のほうは、どう?」 彗星のスマホを打つ手が止まった。 「除霊で忙しいです」 「それって、まさか......」 「理不尽に殺された霊の除霊で、忙しいです」 「そんなことに」 居酒屋のざわめきとは違う感覚で、僕の気持ちは揺らいだ。 飲み会らしきグループ、恋人同士らしき男女、会社の同僚らしき二人。 特に何もしなければ平穏に暮らせる日本において、人の命が、いま 危機にさらされている。 彗星が言うには、目が合っただけとか、歌を歌っていただけとか。 些細なことで人差し指を突かれたと、霊は言っているそうだ。
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