捕らわれの女

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大勢の人間が同時に喋ると本当に『ザワザワ』という音になる。 そのざわめく街で僕は必死に周辺を見渡した。 「映子!」 みつけた。 細い肩、ショートカットの髪、細い身体、真っ赤な口紅。 映子が僕に気づいて走り去った。 僕は追いかけた。 人の多いところから裏道へと入った。 「映子!」 映子が立ち止まった。 線路沿いの人の通らない道。 頭上から音がした。 見上げるとビルの看板が揺れている。 「僕にぶつける気か?」 ガタンと大きな音がして、看板が落ちた。 僕の真横へと。 映子が立ち尽くしている。 「殺さないのか?」 映子が近づいてくる。 抱き着いてきた。 僕は抱きしめた。
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