人を殺せる女

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洋風の建物が大小、崩壊したまま放置されている。 薄暗い灰色の風が吹いている。 「ここは、魔界じゃないか」 僕は容易く場所を理解したけれど、来れたこと自体に驚いていた。 「魔界を知っているとは、おまえはなんだ?」 「魔界に関係している者。それより互いに自己紹介しませんか?」 「わかっている、ついてこい」 男が両腕を離して前を歩き出した。 瓦礫の山を通り、右に曲がる。 「ここが俺たちの拠点だ」 そこにあったのは喫茶店らしき建物だった。 正方形の看板が置いてあり、ガラス棚にはメニューの食料サンプルが 並べられていた。 中に入るとカウンターがあり、白い丸椅子が数個、ソファー席が二つあった。 「おはよーございーす。あれ?どちら様?」 ソファー席で足を伸ばしてテーブルに乗せている男がいた。 グレーのスーツ姿で茶髪で、目が小さくて地味な顔立ちだった。 「日並刀麻です」 「辰巳直純(たつみ なおずみ)だ。そこにいるのはヨト、魔物だ」 「どうもー」 ヨトがテーブルから足を外してソファーに座り直した。
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