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「直純さん、僕、映子とライン交換しましたよ」
「なんだって!」
辰巳が身を乗り出した。
「会う約束をして、おびき出す。やってみますか?」
「協力してくれるのか?」
「まあ、ここまできたら」
「頼む!」
ヨトが声を上げて笑った。
「さあて、上手く引っかかりますかねえ?」
辰巳は話した。
映子に逃げられてばかりだと。
あるときは渋谷のスクランブル交差点前にいた。
そこに路上ライヴする男がいた。
いわゆるギターなど楽器を弾きながら外で歌う行為だ。
様々な形態があるし、渋谷では珍しい楽器を披露するタイプもいる。
そのときの男は、かなりの声量でギターをかき鳴らしていた。
歌詞の内容が『青春の日々』だとか『荒野を突き進め』とか、いわゆる
熱情系だったそうだ。
それなりに人だかりができて、歌う側と聴く側で距離間があった。
映子はそこを真っ直ぐに歩いて、演奏して歌う男の指を人差し指の爪で
突いた。
「うざったらしい」と。
「赤塔映子!」
辰巳は映子へと向かっていった。
しかしゆるやかに歩いて人ゴミの中に消え去ってしまった。
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