繰り返す女

20/33
前へ
/273ページ
次へ
これで何もかもがうまくいく筈だった。 しかしゼーノは「混沌とした世界」を望んだ。 別世界の破壊の神であるターロをけしかけた。 以前の世界と同じ展開で、戦士となって映子は蘇った。 ターロが魔界にやってきて映子に金色の玉を飲ませたのだ。 身動きが取れるようになった栄子は、テウスを一撃で殺した。 「最も憎い相手が死んでる」 栄子が僕を見てきた。 「結局は前世から、魔界なんてものがあったから。 魔界も魔物も消滅させる。 日並、私ね、前世で最も記憶しているのは、娘の麻子のことなの。 我が子を殺人者にしたことだけは、悔やんでも悔やみきれない......」 屋敷が崩壊していく。 その中で悠然と立っている栄子を美しいとは思えなかった。 あぁ、僕が愛しているのは、この女じゃない。 映子なんだ。 それだけを、ただぼんやりと思っていた。
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加