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瑛子は釈放されてから居酒屋で働き始めた。
僕は、その居酒屋の常連になってみた。
そして瑛子と気軽に話せるようになった。
ある雨の夜、傘をかざして瑛子を自宅まで送った。
「せっかくだから、温かいお茶でも飲んでいって」
と、招かれた。
古びたアパートだったが、フローリングの床だった。
小さな食卓用テーブルで向かい合って座り、玄米茶を飲む。
「私ね、元は殺人犯だから、関わらないほうがいいと思います」
そう言って瑛子は話してくれた。
「君は娘の命を守ろうとしただけだ」
「そう、そうなんです。だから後悔なんてしていない。
たとえ二度と会えなくても、元気でいてくれればいい」
瑛子は茶の入った湯呑みに涙を落とした。
娘と一緒に幸せになれない......。
これも映子の背負った業なのだと、ようやくわかった。
そこからも抜け出すことはできないのだろうか。
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