繰り返す女

33/33
前へ
/273ページ
次へ
新宿駅は、やはり苦手だ。 ザワザワとする。 だけど僕には予感があった。 大きいトイレの壁にいる、美しい女性と中年男性。 ショートカットの髪、細い身体、真っ赤な口紅。 「チカン野郎は許さない、駅員のところへ連れて行く!」 その女性は男の腕を引っ張って歩き出した。 僕は声がかけられなかった。 赤塔映子。 もうデータは調べてある。 今度は人を殺す能力を持っていない。 テウスのいない、ターロのいない世界で、もう映子に関与できる者は 一人もいないのだ。 さあ、次はどう生きる? どんな生き方をする? 僕は見届けてやる。 君から離れない。 気高い君が、この世界で結婚して子供を産んで幸せになれるのか。 僕には対峙する運命にあるのだ。 ――完――
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加