映子という女

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映子という女

赤塔映子は大学生だった。 中級の家庭に育ち、気の強い以外は普通の女の子で、そして変わらずに 男性にモテていた。 しかし誰とも付き合わなかった。 データによると才女で、有名企業に就職することが夢となっていた。 「社長と結婚するのが夢?チカンを撃退した勇者さん」 大学構内に侵入して、瑛子に話しかけてみた。 「新宿の件、みてたのね、かわいい顔のあなた」 真っ赤な口紅の口角を上げた。 「そうね、上級な生活に憧れるわね。なんでかしら。 うちだって、そこそこ良い家なのに」 「僕と付き合えば、贅沢させてあげられるけど?」 「冗談はやめてよ、でも、あなた嫌いじゃないタイプ。 ラインの交換くらいはしてもいいわよ」 「やった、嬉しいよ」 不思議だ。 赤塔映子に舞い戻ったのに、惚れるという感情が沸かない。 どうしたって、あの人を殺していた映子を、僕は愛している。 当然といえば当然なのかもしれない。 あんなに激しく愛し合った後なのだから。
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