映子という女

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それから映子は、生き残った魔物たちと話し合おうとしたそうだ。 もちろん始めは上手くいかなかった。 しかし耳を傾けてくれる者もいた。 どうしても戦いにもなったが、トドメは刺さなかった。 それを繰り返し、すべての魔物たちとカタをつけたのだそうだ。 「映子が、そんな努力を......」 ゼーノの言った「ひとつだけは、やり直させてやる」 あれは、これだったのか。 麻子が殺人者にならずに済む未来だったんだ。 僕は安堵の大きな溜め息をついた。 「大丈夫?朝ごはん、食べれる?」 「食べる、食べるよ」 僕はパジャマから着替えて食卓用テーブルに付いた。 あんなに必死だった日々が、一瞬にして消え失せた。 だけど。 僕の愛する映子の元に戻ってこれて、麻子が無事だ。 「お父さん、小学校に行きたい」 麻子が小さな手で茶碗と箸を持って言ってきた。 「そうだ、そうだね、できないこともない」 「天人くんと一緒の小学校、行きたい」 「それはたぶん、家が離れているから無理だよ」 「他に友達、できるかなあ?」 来る筈の無かった未来が来た。
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