映子という女

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平穏な時間は、思わぬ方向から悪化した。 テウスが麻子を誘拐したのだ。 魔界が朽ちたとき、映子が殺さなかったテウスは、人間界に潜んでいた。 そのテウスが下校途中の麻子を連れ去ったのだ。 僕は感知能力で居場所を突き止めた。 都内の高級マンションの12階だった。 そこへ移動したら......。 テウスがリビングで血を流して倒れていた。 「麻子、麻子がやったのか?」 「そうよ、勝手に連れてくるなんて最低、嫌がったのに」 テウスはかろうじて生きていた。 「やれやれ、元気な娘さんだね......」 「テウス、麻子を捕らえて、育てて、 映子の代わりのコレクションにするつもりだったのか?」 「そうだよ、この場所を封印して、探せないようにして、 大人になるまで育てるつもりだった」 「お父さん、帰ろう」 麻子が手を握ってきた。 「あいつ、話しても無駄だった。殺す?」 「殺しちゃダメだ。天人くんに嫌われるよ」 「なら、しない」 僕たちは自宅に移動した。 麻子は天人くんが、お気に入りらしい。
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