映子という女

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それからもテウスはあきらめなかったが、麻子のほうが強かった。 あきらめきれないテウスは、ついにターロと手を組んだ。 人間界に戦闘機を何千万も上空に飛ばし、街に影ができた。 「麻子を渡せ、映子でもいい、でなければ一斉攻撃するぞ」 「私が、行くわ」 映子が心に決めた。 「日並くん、麻子をお願いね」 麻子を抱きしめたあと、映子は消えた。 それと同時に戦闘機も消えた。 謎の怪現象として話題になったが、すぐに別の事件へと話題は 移り変わってしまった。 「どうしても、どうしても、映子は娘と離れるのか!」 映子が消えてから、麻子は学校に行かなくなった。 「もう編み込みしてもらえない、綺麗になれない」 僕は麻子を抱きしめて泣くだけだった。 映子は再びテウスのコレクションになった。 もう屋敷は魔界ごと無くなったので、人間界のマンションに作られた 赤い装飾の壁に飾られた。 「さすがにマンションで歌われるのは困る。 喋れないままでいてくれ」 映子は声さえも奪われた。
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