映子という女

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「お兄さん、見かけない顔だね、旅行者?」 「え?あぁ、うん、初めて来た」 「そうなんだ、良い街だよ、平和すぎて退屈なくらい」 「君は、それで満足?」 「当たり前だろ、誰が争い事とか望むんだよ、 俺、そんな悪趣味じゃないよ」 「そうか、そうだね」 このゼーノは混沌を望んではいない。 それなら、どうしていまのゼーノは?いつ、なったんだろう。 ゼーノは果実ジュースを、その場で飲み切って、瓶を店の店主へと 渡した。 「お兄さん、ボール遊びするんだけど、一緒にどう?」 「まぜてもろおうかな」 「じゃあ、こっち、俺ら、けっこう強いよ!」 駈け出すゼーノを追いかけて、街を抜け、広場まで出た。 シートを広げてくつろぐ家族、縄飛びをする女の子、駆ける男の子。 それぞれに、それぞれの平和な時間があった。
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