映子という女

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僕たち広場の端でボールを投げ合った。 バスケットボールのようにリングがあり、そこに遠くから投げ入れて 得点を競い合うというルールだった。 背の高い僕が投げれば勝てるかと思ったのに、子供たちは遠くから 正確にリングを狙って投げていく。 「これは無理だ、敵わない」 僕は草むらに座り込んだ。 ゼーノが一番、上手くて、優勝していた。 「お兄さん、今日の宿は決めてる?うち宿屋なんだ、どう?」 「泊めてもらおうかな」 「やった!お客を取ったから父さんに褒められる!」 「客にしたくて誘ったのか、ちゃっかりしてるなあ」 「えへへへっ」 これが本当に、あのゼーノなのだろうか? しかし、意味もなく、こんな世界に来たわけがない。 ひとしきり遊んでから、ゼーノの家へと向かった。
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