映子という女

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通された部屋はビジネスホテルのように狭かったけれど、綺麗だった。 「時期に夕飯だからね。あっ、名前?」 「えっと、トーマ」 「トーマ、母さんの作る食事は最高だよ!」 そう言ってから階段を駆け下りていった。 「きっと良からぬことが起きるのだろうな」 僕はもう身構えていた。 それでも。 夕食の時間になり、一回の食卓で食べた料理はおいしかった。 「シーフードのシチュー、もっと食べて。 広場からもっと先に海があるんだ、明日は行ってみるといいよ」 「そうか、海があるんだね」 「うん、俺はね、浜辺に打ち上げられてた子供なんだ。 それを父さんと母さんが育ててくれたんだ。 どこから来たのかは、わからないんだよね」 パンをちぎって食べながらゼーノが言った。
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