人を殺せる女

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中野の商店街としては有名なソンモール街は通行人にあふれていて 人とぶつからずに歩くのに必死だった。 妙に薬局が多くて、安売り店が多い。 横道に入れば飲み街があったり、病院があったり、ブェードウェイと 呼ばれる場所は地下が食料品売り場だったり、占いをやっていたりと 全体的にカオスな場所だ。 僕たちはブェードウェイにある喫茶店に入った。 映子と向かい合って座り、ヨトと辰巳は近くの席に座った。 「殺される相手と、お茶する気分は?」 出されたオレンジジュースを飲みながら僕は言ってみた。 「うっとおしい」 映子はアイスコーヒーを飲んでいる。 「私ね、ブラックコーヒーしか飲めないのよ」 「甘党っぽいけど?」 「テウスに言われてるのよ、糖分を控えろって」 「おいしい?」 「慣れてはきたかな?」 映子は横眼で辰巳たちの席を見る。 映子の表情というのは笑い方にはバリエーションがあるけれど、それ以外 では冷たい感じがすると、僕は気づき始めた。
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