映子という女

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「お兄さんだけ死なない、どうして?」 白いシャツを白い髪を血で赤くしたゼーノが聞いてきた。 「僕は、他の人間とは違うから」 「ふーん、まあ、どうでもいいや」 ゼーノが外へ出た。 そして街を歩き回って、盗賊を殺し回った。 街の人々は全滅していた。 「ゼーノ!」 「ねえ、お兄さん、混沌って、けっこう楽しいね」 「ゼーノ......」 「血筋がいけない、母親がいけない、許せない、 けどさ、人を殺すのってさ、面白いって、知ったよ。 だって俺、こんなにも簡単に復讐できちゃったんだ。 いま、すっごく興奮してる。やっつけた、俺がやれたんだ!」 「ゼーノ、君は悪者たちを殺した。それは正義と言っていい。 だけど、殺戮を楽しんじゃいけない」 「無理」 「え?」 「血が騒ぐんだ、殺せ殺せと。俺は海に出て、人を殺しに行く」 「ダメだ、ゼーノ!」 『そうだやってはいけない』 頭上から声がした。
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