映子という女

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「え?」 「ゼーノの幽閉から逃がせたでしょう? あれね、よくわかってなかった。まだ小さかったから。 10才でわかった。目覚めたって感じかな。 ゼーノより上の存在だから、やれたんだよ」 彗星が両手を振って動揺している。 「いや、待て、天人、俺は出産にも立ち会ったんだぞ、 母さんから産まれてきたんだ、よその子でもない」 「死産だったんだよ」 「え?」 「産まれ出たときに、息が止まってから吹き返したでしょ? 俺の魂が入ったからなんだ」 「そんな......」 「安心して、ずっと父さんの子供なのは変わらないから。 それから、刀麻、安心して、協力するから」 僕は玄関先で座り込んだ。 「君が、父親.......」 涙があふれてきた。 「お父さん、助けて、映子を助けて、ゼーノを助けて......」 まだ小さな手で、天人が背中を撫でてきた。
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