映子という女

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夕飯が済んでから、百合絵さんが麻子と風呂に入ってくれた。 久しぶりに麻子の笑う声が聞けた。 それから百合絵さんが麻子を抱いて寝静まった頃、僕たちは 天人くんの話しを聞くことになり、居間に彗星と集まっている。 「俺の王だった頃の名は、イース。 そもそも妻に力を与えたのが、間違いでした」 イースは貧しい家の娘と恋仲になり、妻にした。 実家を支援して暮らしを豊かにしてあげた。 妻のリノは、楽になった生活の中で、更なる贅沢を求めた。 そして子供を産んでから、その欲求は増していった。 気づけば盗賊団を作っていた。 イースは必死に説得した。 「沢な暮らしならさせてあげるから、人や街を襲わないでくれ」と。 しかしリノはやめなかった。 奪うことの楽しみに夢中になっていたのだ。 リノが街を襲撃する、イースが止めに行く、襲われた街を修復する。 しかし死んだ者を蘇生させることはできなかった。 イーサは必死に止め続けたが、次第に追うことに疲れていった。 まだ王としての力は曖昧で、幽閉させることもできなかった。 せめて子供が影響を受けないようにと、海へと落として逃がした。 無事に浜辺で拾われるところまでは見届けた。 その後も元気に暮らしていて安堵した。 「でも、リノにみつかってしまった。そして殺戮の快楽に目覚めた。 ゼーノは、リノの性質を濃く受け継いで生まれてしまったんだ」 そしてイーサの力と権限を得た。 「ゼーノの性質を見抜けずに王にした、俺の責任なんだ......」
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