映子という女

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「え......?」 気づくと浜辺にいた。 夢ではない、場所が移動したのだとわかった。 「君は、この世界の人間ではないね」 声がして振り返ると、白い髪に赤い目で白いマントの男。 イースがいた。 「あ、はい、いずれあなたの子に作られる者です」 「俺の、子?」 「まだ生まれていませんか」 「妻さえもいない」 時間が戻ったんだ。 イースはまだリノとさえ出会っていない。 「あの、どうか聞いてください、この先の悲劇を!」 僕は必死に説明した、妻にした女性が盗賊になってしまうこと。 そして生まれた子が母親を殺して、混沌とした世界を作り出すことを。 「俺が、間違えてしまうんだね」 「そ、そうです」 「わかった、結婚はしない、子も作らない、このまま王でいる。 しかしそうなると、君は生まれないことになるよ?」 「かまいません!そもそも僕も間違えてしまうのだから、 元からいないほうがいいんです」 それが、僕の決めた再生への道だった。
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