映子という女

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バイクで食材を配達する。 いつもの道路、山道、急な坂、風が心地好い。 エーコは商店でレジをしている。 美人なので看板娘になっている。 賑わう市場、レンガ造りの街並み、子供たちが遊ぶ広場。 平和を絵に描いたような世界だった。 「トーマ、エーコとそろそろ結婚してもいいんじゃない?」 夕飯を食べていたら母親に言われた。 「エーコは、街の社長の息子さんとの縁談が決まったらしいよ」 父親が酒を飲みながら残念そうな顔をした。 「そうなのか?やはり美人は玉の輿に乗ったか」 僕は変な感覚がした。 エーコが街で一番の金持ちの嫁になる? そうすると、エーコを好きな男たちは黙っているだろうか。
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