映子という女

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僕の心配は空振りした。 誰もがエーコの縁談を祝福したのだ。 そして盛大な結婚式が挙げられた。 やがてエーコは娘を産み、幸せに暮らしていた。 僕は何を心配していたのだろう。 この世界には混沌は無いのだ。 僕は僕で独身のままで商店で働いている。 正直、エーコに恋をしていたので、失恋の痛手はあった。 その気持ちを胸に隠して暮らした。 いつものように、配達をして、レジを打って、商品を棚に並べて。 両親と暮らしていった。 不満など何も無かった。 背負うものなど何も無かった。 ただ、働いて、昼寝して、食べて、風呂に入って、寝て、起きた。 すべてが整っていた。
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