人を殺せる女

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僕たちは商店街に出た。 「こっち」 ゲームセンターに入っていく、そこを抜けたら歩道に出た。 「さあ、これからどうする?デートの続き?」 僕はズボンのポケットから折りたたみナイフを取り出した。 「僕が君を殺す。これもテウスは見抜いているよね?」 「いいえ、かなり意外」 「なるほど、わかった。テウスに感知できる時間の限界があると。 要するに追いかける時間を長くすれば、テウスの感知から抜けられる。 これは新しく得れた情報だ」 「私は、切羽詰まってきたわけね」 「君を、殺す。僕は逮捕されたりとかしない」 歩道も行き交う人でいっぱいだ。 ナイフに気づいて見てきた者もいたが、ほとんどが歩いていく。 「私は死にたくない」 映子がUFOキャッチャーのガラス戸にもたれて言った。 「たとえばゾンビ映画で生き残る主人公でいたい。 噛まれて食い殺される脇役なんて嫌なのよ」 「映子......」 初めて、その名を本人の前で口にした。 「日並くん、私は死なない」 映子が歩道を走り消え去った。
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