映子という女

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亡くなった男子の葬儀へと親子で参列した。 母親は声を上げて泣いて小さな棺を抱きしめていた。 すすり泣く声も複数、聞こえる。 思えば、ちゃんとして葬儀に出向いたのは初めてだった。 僕は映子のしたことの確かな現実を噛みしめていた。 それから麻子は不登校になった。 「麻子、学校なんて行かなくてもいいよ。勉強は教えてあげる」 しかし麻子から笑顔が消えたままだった。 「お母さん、殺し過ぎ」 麻子がつぶやいた。 「お母さん、怖い......」 「麻子、お母さんのこと、嫌いになった?」 「ううん、好き」 麻子が映子へと抱き着いていった。 映子は抱きしめた。 「麻子、いつだって守ってあげる。いくらでも殺してあげる」 これでいい筈がないと、さすがに僕は思った。
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